生前戒名
生前戒名
近年、生前戒名のご相談が増えております。
戒名を生前に授かることは決しておかしなことではなく、むしろ戒名の本来の意義から考えれば望ましいことです。ただ、問題は生前戒名を望んだ理由です。戒名を授かる時期、その本義についてまとめてみましょう。
【生前の授与】
授かる当人が生きているうちの戒名授与、いわゆる「生前戒名」です。戒名は単なる名づけではなく、仏教に帰依した仏弟子として授かる安名なのですから、生前の授与が最も望ましいと言えます。
【臨終の授与】
まさに死に臨んでの戒名授与です。ギリギリのところで仏弟子としての安心を得る意味があるでしょう。 例えば、日本の史書『続日本後紀』には、嵯峨天皇の子である仁明天皇が、死の二日前に病気平癒を願って戒を受けたとの記録があるそうです。臨終での戒名授与の例でしょう。
【死後の授与】
最も一般的となっているのが、死亡の後に授けられる死後授与です。実際には、七割以上が死後授与と言われますので、死後授与が正式な作法だと思っている方も多いのではないでしょうか。死後の戒名授与は、目に見える身体を自然に還し「空」という存在に遷る故人の御霊に仏縁をもたらしていると言えます。
禅宗では、一人前の僧侶となる前に志半ばで亡くなった仏弟子を哀れみ、死後に正式な僧名を授与し、師や兄弟子達が一人前の僧侶として葬送を行ったと言われます。死後の授与は送る者の優しさのあらわれでもあります。
戒名の本義は
仏教に帰依した証として仏弟子の名を授かるのが戒名の本義です。生前に仏縁を得て、日々の生活にブッダの教えが活かされるのが理想です。師僧から安名を授かり、仏道へ生まれ変わっていく感激は純粋に尊いものです。
世間には、「戒名無用論」や「自分でつければよい」などという主張もあるようですが、根本的な意義を見失ってはいけません。仏教は学びがいある法門であり、仏縁を得て戒と名を授かるという伝統は奥深いものです。単なる名づけ・飾りではないのです。
長昌寺での戒名授与
【生前授与】
本堂にて、以下の作法による授与を基本とします。
・坐禅
・法話
・本尊回向
・授戒
・血脈、安名授与
【死後授与】
通夜、葬儀の流れの中で授与します。
戒名授与の際の布施
世間では戒名に値段があるように理解され、俗に「戒名料」と呼ばれております。この問題は、各寺院や住職の考えも様々です。仏縁の程度など様々な要素によっても変わるでしょう。本来は、戒名授与の際の布施行なのです。布施行である以上、定価がつけられるものではないのです。
なお、長昌寺の場合、院号・軒号・庵号などの「尊称」につきましては、戒名そのものではなく特別に戒名に冠される部分ですので、檀家総代とも相談したある程度の目安があります。
長昌寺住職は、生前戒名について様々な角度から考察した『生前戒名の本義~仏教的終活』(仮題)という新著を刊行する予定です。ご興味ある方は、ぜひご一読ください。